第11章 will
「潤が事故にあった時、どうして俺伝えてなかったんだろうって凄く後悔した。だから…こんな形だけど、言えてよかった…」
そう言って病室から出ていこうとする。
「ま、待てよ!智!だから俺は動けないんだってば!」
「もう!察してくれよ!お前の前で泣きたくないんだよ!」
「泣けよ!別に気にしねえよ!」
「やだ!」
「智!」
智はしぶしぶ病室のドアの前で止まった。
こらえきれず、服の袖で涙を拭っている。
「き、傷が…治るまで本当は言うつもりなかったんだ…なのに潤があんなことするから…」
「…あんなこと…?」
「看護師ナンパしてたじゃん」
「ちげーわ…あっちから言ってきたんだよ…」
智はずっと俺に背を向けて、俯いてる。
「智ぃ…こっち向けよ…」
「やだ」
その背中を見てるうちに、わからなかったことがだんだんわかってきた気がした。
俺はノーマルだよ。
だけどさ、智にあんなことされてもちっとも嫌じゃなかった。
それどころか、智に触って欲しいって思った。
だって、智はいつもそばに居て俺のこと支えてくれるから。
だから、あんな事されたって全然不快じゃない。
それどころか…
「智…?」
「なんだよ。振るなら早く言えよ」
「じゃあ言うからな…」
「おう」
「一緒に、居てよ」