第11章 will
…智って、俺の彼女だっけ?
いや、待て待て。
その前に、智、男だし。
いや…でもこの状況…
一緒に暮らしてるわ、病院にもずっと詰めてもらってるわ…
体拭いてもらったりしてるし…
まるで彼女じゃねえか…
そう思ってたら、突然智が立ちあがった。
びくっとして見上げると、智は無言で病室を出ていこうとする。
「ど、どこ行くんだよ」
「溜まってるから、さっきの看護師で抜いてくる」
「えっ!?何言ってんだよ!?」
「あいつ、俺に気があんだろ?トイレとかでヤラせてくれんだろ?」
「おいっ…智っ」
「なんだよ」
「それはよくない!良くないと思う!」
「はあ?」
「だって、好きじゃねえんだろ?」
「は?おまえだって、すきじゃないのに紹介してもらおうとしてたじゃねえか」
「それは紹介してもらってから決めることだろ!?」
「…じゃあわかった。俺、アイツ好きになったから行ってくるわ」
「ま、待てって!…なにヤケになってんだよ…」
「…なってねえよ…」
そう言って智は病室を出て行ってしまった。
「なんだよこれ…」
まるで痴話喧嘩じゃねえか…
怒鳴ったせいで、腹の傷がチクチク痛んだ。
「フザケンナよ…」
俺がなにしたっていうんだよ…男としてふつうのコトだろうが…
しかもナースだぞ!?なにがいけないんだよ…