第10章 stream
「安藤の目的は…金…」
潤がベッドの上から呟く。
「そんなものの為に、俺、歩けなくなったの?」
「潤…!」
智が潤を制するが、潤は涙を流した。
「そんなもののために…?」
「まだわからないんだから、な?潤…」
「出ましょう。松本さんにはゆっくり休んでいただかないと」
美穂さんが言って、やっと俺たちは病室から出た。
「ごめん…潤…」
和也が去り際、潤に向かってぽつりと呟いた。
「あの…」
智が美穂さんに話しかけた。
「俺、ここ残っていいですか?」
「大野さん…」
「ここなら、安藤は手出ししてこないでしょう?だから、俺もここに…」
「でもここは完全看護ですから…」
「あいつ、不安定です…一人にしたら何するか…」
「…ちょっと交渉してきます…」
由美さんが駈け出した。
「ちょっ…由美さんっ…」
なんだかわからないけど、由美さんは智をここに残したいみたいだ。
「しょうがないわね…」
「すいません、我儘言って…」
「でも、ここならまず安藤は入って来られないと思いますし…いいでしょう。病院側の許可さえ出れば…」
「はい…すいません、守っていただいているのに…」
「あ、そのことなんですが…相葉さん」
「はい?」
「ご依頼内容に、ここにいる方々の警護を付け加えていいでしょうか?」