第10章 stream
「…松本さんは可能性はまだあります。リハビリ次第では歩けるようになるかもしれない。今は傷を直すことが大事です」
美穂さんはまっすぐに俺たちを見た。
「二宮さんたちのせいじゃないんです。だからお教えしなかったんです。もし教えたら、あなたがしそうなことが予想がついたからです」
俺は俯いてしまった。
そう…誰も悪くないんだ…
悪いのは、安藤。あいつなんだ。
わかってはいるんだけど。心がついていかない。
俺達が一緒に居たから、潤は巻き込まれたんだって思いから逃れることができない。
「かずくん…」
翔が俺の手をぎゅっと握った。
ずっと翔には怖い思いをさせているし、心配させてる。
こんな情けない状況で、俺はもうなにも考えられなくなっていた。
「もう、ケリをつけたい…」
そう、もう終わりにしよう。
安藤を殺せばいい。
アイツはシャブ中のひとでなしだ。
死んだって誰も悲しむ奴なんていないだろう。
むしろ、喜ぶヤツの方が多いだろうし。
ムショにぶち込んだところで、死刑になるはずもない。
何年かしたら出てきてしまうんだろ、どうせ。
そうなったらまた翔は付け狙われるかもしれない。
一生、翔は安藤の影に怯えて暮らさなきゃいけないんだ。