第10章 stream
雅紀が泣きながら眠りに落ちた。
続けて、翼っていう子も眠っていく。
二人はぎゅっとしがみついて、お互いを支え合うように横になっている。
「美穂さん…」
カーテンの向こうから美穂さんと由美さんがこちらを覗いた。
「この子もしかして…」
「そうですね。安藤が誘拐した子供でしょう」
「じゃああの秀明ってひとは?」
智がカーテンから出ながら美穂さんに聞く。
俺も後に続いてカーテンから出た。
「滝沢秀明…安藤が暴行事件を起こしたとされる元少年です」
「えっ…なんで安藤の元に…?」
「さあ…それはわかりませんね…」
「でも、とにかく雅紀の恋人になって、雅紀を逃がしてくれようとしたんだよね…」
雅紀の涙に濡れた顔を思い出すと、心が痛んだ。
翔…あれが俺とお前だったらと思うと…
由美さんの影から翔が出てきて、俺に抱きついた。
「かずくん…」
「どうした…?雅紀が泣いてたから悲しくなった?」
「うん…」
「そっか…」
背中に腕を回して、トントンと叩く。
「大丈夫だよ…翔…」
なんの根拠もないけど…自信もないけど…
絶対にお前のこと、守るからね。
絶対に、翼って子みたいな泣かせ方させない。