第10章 stream
「雅紀…起きて?」
秀明が呼んでいる声がする。
「なに…?どうした…?」
相変わらず時間の経過がわからない部屋のベッドで俺は目覚めた。
秀明の部屋のパソコンからモーター音がしている。
部屋の電気は消えていて、モニターの光が俺を照らしていた。
「安藤がくる」
「えっ…!?」
「連絡があった。今から雅紀を外に逃がすから」
「秀明…そんなことしたらお前…」
「いいから!今しかチャンスはない…服、着替えて?」
秀明は俺の服を持っていた。
「洗濯しといたから…」
そう言って微笑んだ。
「秀明…」
俺は秀明を引き寄せて抱きしめた。
「一緒に逃げよう?」
「え…?」
「秀明も一緒に」
「だめだよ…翼のこと放っておけない…」
「じゃあ翼も一緒だ」
「雅紀…できるわけない。翼は6歳から外に出たことがないんだ」
「できる。やれる。最初から諦めたら何にもできない。お前、俺と一緒に居たくないのか?」
秀明は黙りこんだ。
俺の顔をじっとみてから、俯いた。
「一緒に、居たいよ…」
「じゃあ、行くんだ。さあ、準備しろ」
秀明の腕を掴むと立ちあがった。
俺は部屋を出て翼を起こした。
「翼、起きろ」
「んー…」
目を擦りながら翼は半身を起こした。
「さ、服を着替えような?」