第10章 stream
「あの…リョクザンカイって…?」
智がマグカップをテーブルに置きながら聞いた。
「ヤクザですよ。安藤が借金をしているところです。今日、情報が入りました」
「緑山会に追われて、公安にも追われて…まさに手負いの獅子ですね…だからあんな真似したんでしょうね…」
由美さんが冷静に分析をする。
「シャブでとち狂ってるだけよ…」
吐き捨てるように美穂さんが言った。
「さて…どう出てくるか…」
挑むような目で美穂さんが遠くを見る。
この人達はこんなに前向きなのに…
俺ときたら…情けない…
「すいません…俺になにかできることはないでしょうか?」
美穂さんと由美さんが俺の顔を見た。
意外なことを言われたというような顔をしていた。
「そもそも当初は雅紀からの依頼で、安藤のこと調べてたんですよね…?なのにこんなことになって…」
「二宮さん、それは…」
「俺もなにかしたいんです…」
なにもできないもどかしさが、俺の中から消えない。
安藤が現れても、無力だった。
「俺も…何かしたい…」
智がぽつりと言った。
「俺だって…雅紀や潤の為になにかしてーよ…」
うつむいている智の肩を、俺は抱いた。
ごめん。智。巻き込んでごめん…。
「相手は…現職の警官で、そして麻薬中毒です…」
美穂さんが呟いた。
「おまけに相葉さんや少年を人質にとっています。公安でも手を出すのが難しいでしょう…」
腕を組むと、イスに腰掛けた。
「ただ、今回のことで櫻井さんが狙いだということははっきりしましたね…」
美穂さんは足を組むと、にやりと笑ってこちらを見た。
「ご相談、承りました」