第10章 stream
「美穂さんが車をこちらに回しています。安藤は今、美樹さんが追っていますから、安心してください」
「えっ…美樹さん居たんですか?ここに…」
「ええ。安藤を追ってきたみたいです」
さらっと言ってるけど…由美さぁん…
力が抜けて上手く歩けない。
翔も泣きじゃくって全然立ち上がれない。
智も頭を殴られたみたくて、頭をずっとさすって座り込んでる。
俺たちは3人でなんとか支えあいながら下まで降りた。
エレベーターを出ると、美穂さんがこちらに駆けてくるところだった。
「行きましょう」
そう言って車に乗り込んで向かった先は商店街だった。
「美穂さん、ここは…?」
「笹塚です。安藤にとっては灯台下暗しの場所なんですよ」
「どういうことですか…?」
「ここは、安藤の地元なんです」
商店街の中にある雑居ビル。
ここに俺たちは入れられた。
少し広めの部屋が空いていて、そこで今晩は過ごすことになった。
「たまたま知り合いがここを持っていたんです。今、借りてがいないから、暫く借受ました」
美穂さんがそう言ってテキパキと室内を整え始めた。
家具は一通り搬入してあって、隅には畳と布団が積んである。
あれで今晩は寝ろってことね…
「急なことでこれだけしか用意できませんでした。すいません…」
心底申し訳無さそうな顔をされたら、何故か今更安藤の恐怖が蘇ってきた。