第10章 stream
ジリジリと安藤が近寄ってくる。
翔を後ろ手にかばったまま、脳がフル回転してる。
全てがスローモーションに見えた。
安藤の後ろで智が立ちあがった。
ビジネスチェアを智が持ち上げて、安藤に向かって投げつけた。
安藤は咄嗟に振り返ってイスを腕で払った。
ガターンと派手な音を立てて、イスが床に転がった。
「安藤…てめえ…安藤だな…?」
智の目がイっちゃってる。
俺は目の前に転がったイスを掴んだ。
安藤は智に身体を向けている。
「なにしやがんだ…この野郎…」
安藤の黒いブーツが智のほうに向かった瞬間、俺は思い切りビジネスチェアを持ち上げて安藤の頭を殴りつけた。
(やった…やっちまった…)
そんな感触はあった。
安藤はがくっと膝をついた。
「…なんだぁ…?」
「えっ…」
死んだと思った。
でも…安藤は起き上がった。
「てめえ…二宮…どこまで邪魔するつもりだ…!」
安藤が凄い形相でこちらを睨んだ。
ここで、死ぬかもしれない…
そう思った瞬間、翔が後ろから飛び出した。
「だめぇぇぇ!かずくんだめぇぇぇ」
俺を庇うように腕を広げて、俺と安藤の間に立った。
「翔!だめだっ…下がってろ!」
「いやっ…かずくんにいたいことしちゃいやっ…」
「翔っ…だめだっ」
翔の腕を掴んで後ろにひっぱるけど動かない。
「翔っ…」