第10章 stream
二人で湯に浸かって、身体を寄せ合う。
「かずくん…おうちかえりたい…」
「ん、そうだな…」
親指を咥えたまま翔は俺をじっと見ている。
「お姉さん達が、おじさんから俺たちを守ってくれているんだよ?」
「…おじさん…」
翔は俺の腕を掴んだ。
「おじさん…こわい…いたいことする…」
翔の身体を抱き寄せた。
「大丈夫…俺が…一緒に居るからね…?」
「かずくん…」
ぎゅっと抱きしめていると、翔ははらはらと涙をこぼした。
なんの涙か、聞くことはできなかった。
風呂から上がって着替えていると、呼び鈴が鳴った。
ドアスコープを覗いたら、智が居た。
「おう、入れよ」
突然、智が前のめりになって転びながら部屋に入ってきた。
「智!?」
ドアが突然大きく開いた。
そこには、安藤が立っていた。
驚いて声が出なかった。
安藤は俺の襟首を掴むと、いとも簡単に持ち上げて壁に叩きつけた。
背中を打ち付けて痛みで声も出ない。
床に転がっている智は気を失っていた。
「翔…」
安藤がつぶやきながら翔に近づいていく。
「あああああっ…」
翔は窓際まで後ずさって安藤から逃げようとしている。
「翔…さあ…来るんだ…」
「いやぁ…いやぁ…」
「翔!!」