第2章 sanctuary
「切れてるって…」
「もう傷は塞がってるけど、性的虐待受けてたんじゃねえかな…」
「まじで…だってコイツ男だろ?」
「男だって…好きな奴は好きだろ?」
雅紀が黙りこんだ。
しまった。今、言わなくていいこと言った。
「まあ、な…」
雅紀はベッドに寄りかかった。
「物好きは、世の中に一杯いるわな…」
上を向くと、目に腕を当てた。
「どうする?和。翔、俺が引き取ろうか」
「いや、いいよ。明日、施設連れて行く」
「マジで?」
「だから、今日Gravity行かないわ。皆に言っといて」
「わかった」
Gravityとは、俺達が屯するクラブで、もう5年以上通ってる。
そこで俺達は智と潤に出会った。
今は4人で週末は遊ぶのが、恒例になってる。
遊ぶと言っても、DJの合間に。
俺たちは、DJをやってる。
食っていけるくらいのを目指してるんだけど、なかなかね…
俺の部屋の大半はCDで埋め尽くされてて、卓も置いてあるけど、なかなか世間はそんなに甘くない。
だから親父のとこで働いてる。
「じゃ、俺行くわ…」
「ありがとね。タクシー代も」
「ああ…気にすんなよ」
雅紀はちょっとだけ俺を見つめてから、ふっと笑って部屋を出て行った。