第9章 captive
所持品を確認したけど、スマホも何も持っていない。
財布すらなかった。
知的障害をもった少年は、絵を描き始めた。
することもないから、どこか逃げるところはないかと部屋中回ってみた。
窓もなにもない。
異様な部屋だった。
ミニキッチンとトイレと風呂は付いている。
普通のワンルームマンションみたいなのに、窓がない。
外からの音も、一切聴こえない。
時計もないから、今が何時なのかもわからなかった。
収納を開けてみたけど、ほとんど空で。
一体ここがなんのための部屋なのか、わからなかった。
そしてこの少年も…
「ねえ…名前、なんていうの?」
そう話しかけてみたら、少年は顔を上げてにっこりわらった。
「つばさ!」
「そっか…俺はね、雅紀っていうの。よろしくね」
「うん!」
つばさは嬉しそうに俺の横に来て、書いた絵の説明を始めた。
なにがなんだかわからないけど、とりあえず、うんうんと頷いて聞いておいた。
つばさも、ここに囚われているんだろうか。
一人でこんなところにいたら、頭がおかしくなりそうだったけど、つばさが居てくれたから、なんとか精神を正常に保つことができていたんだと思う。