第8章 tower
「あ…」
「ほら、座れ。翔も、ここに座るんだ」
いつも黙っていることが多いのに、この時の智は凄く饒舌で。
そして凄く頼り甲斐があって。
言われるまま、智の寝ていたベッドに並んで腰掛けた。
「和也…俺だってお前たちが心配なんだよ…」
俯いて、智が呟いた。
「ごめん…智、ごめん…」
その時、由美さんが立ちあがった。
「なんで…」
スマホを握りしめて真っ青になっている。
俺達の方を見ると、スマホの画面をこちらに向けた。
「これは相葉さんですか?」
画面をみると、暗い写真に見覚えのある服を着た人が写っている。
顔は向こうを向いていて、よく見えないが、車の中で脱力しきって倒れているようだ。
「多分…逮捕された時の服だ…」
「安藤が…送ってきました」
「えっ!?」
「こちらの手の内はバレているってことです…」
由美さんは電話を始めた。
美穂さんに連絡しているようだ。
「事務所のメールアドレスに送ってきてます…ええ…」
身体に緊張が走っている。
安藤も、こちらがわの情報を握っているとなると…
どこまでバレていて、どこまでが安全なラインなのか…
全くわからなくなった。