第8章 tower
「安藤…」
智が爪を噛んだ。
「ねえ…犯人、安藤なんでしょう?居場所わかってないんですか?」
「今、行方は追っていますが、警察の方でも掴んでいないようです…」
一瞬にして部屋が殺気立った。
智がウロウロと部屋の中を歩きまわる。
「かずくん…」
翔は怯えて俺にしがみついたまま離れなくなった。
俺はただ黙って、翔の背中を抱きしめているしかなかった。
由美さんの電話がひっきりなしに鳴る。
その度に険しい顔で由美さんは電話に出て、厳しい声を出している。
何が何だかまた、わからなくなった。
潤がひき逃げされ、今また雅紀が連れ去られて…
だめだ…これ以上…これ以上は…
「和也っ…」
智に肩を掴まれる。
「どこ行くんだよ」
聞いたこともない低い声で、足が竦んだ。
「どこって…」
「お前、どうせここから出ていこうとしてんだろ…」
「智…」
「俺から離れようとしてんだろ?」
「ごめん…これ以上無理だよ…智にまでなんかあったら…俺…」
「だからっ…お前がそんなこと思う必要ないんだって…頼むから…」
「でも…」
「ここまで来たら一緒だ。もし、ここで俺たちが別々で行動したところで、俺が雅紀と一緒に人質になったら一緒じゃねえか…」