第2章 sanctuary
翔の身体を支えて途方に暮れていると、俺たちの横に車が停まった。
見ると、アストンマーチンだった。
「雅紀…」
運転席の窓を開けて、雅紀がこちらを心配そうに見てた。
「どうしたの和?」
「ちょっと、警官みたら翔が…」
「乗れよ…送る。今、おまえんち行くところだったんだ…」
「ああ…わりい」
麻布十番の商店街に、不似合いな高級車。
アストンマーチンDB8が滑らかに走りだす。
雅紀の家は、とても金持ちで。
どっかの企業を持ってる。
社長とかじゃない。持ってるんだ。
だから雅紀自身は働かなくても、一生遊んで暮らせる身分で。
本来俺なんかとつるむようなやつじゃないんだけど。
クラブで俺たちは知り合ったんだ。
同じ音楽を愛するものとして。
もう10年以上のつきあいになる。
運転席で雅紀はとてもむずかしい顔をしていた。
ボロアパートに駐車場はないから、コインパに車を入れて部屋に入った。
翔はろくに歩けなくて、俺と雅紀で支えながら階段を上った。
「翔…もうお家だからね?」
「うん…かずくん…」
真っ青になりながら、翔は俺に微笑んだ。
その顔をみたら、胸がズキンと痛んだ。