第8章 tower
「いいからっ…誰か迎えにきてないの?」
由美さんがすぐに電話をどこかにかけ始めた。
『え?わかんね…とにかく出ろって言われて、今、警察署の前にいるけど…』
「だめだっ…警察の中に戻れっ…!」
『えっ?なんだよ…ちゃんと説明しろよ』
「するから、とにかく…」
『え?なんだよアンタっ…』
すぐに通話は切れた。
「雅紀っ!?雅紀っ!?おいっ…」
智が立ちあがって俺の肩を掴む。
「どうした」
「誰か…雅紀に近づいた…すぐ、電話が切れた」
「由美さんっ…雅紀がっ…」
すぐにリダイヤルしてみたけど、繋がることはなかった。
「やられた…マル秘なのに警護も付けないで出すなんて…」
由美さんが悔しそうに呟いた。
暫く由美さんはあちこちに電話を掛けていた。
俺達にはわからない単語がたくさん飛び出してきて、何を喋っているのかよくわからなかった。
しばらくしてぐったりしながら由美さんが俺達の方に向き直った。
「相葉さんの行方がわからなくなりました。麻布警察署の近くで、相葉さんのスマートフォンが発見されました…」
「じゃあ…雅紀は…」
「連れ去られたとみていいでしょうね…」