第8章 tower
「ともかく安藤は、翔を手に入れたくてたまらない。金を返さなければ危ない状況になっているので、焦ってきている、ということですね?」
智が一気に喋った。
「はい。そうですね」
「で、今朝の報道ですけど…あんなに大々的にやってるってことは…」
「安藤を追い詰めるつもりだと思います。今度こそ、公安が動いているものと思われます」
「やっぱり…そうなんですね…」
「ですから、ここ数日はここで辛抱してください」
「ここは安全ってことですね?」
思わず確認した。
「わかりません。安藤はどうやってか、櫻井さんの行方を掴みます。人を雇っている風でもないので、そこはなんとも言えません」
「え…?そうなんですか…」
「今、安藤は逃亡しています。自宅は警察が押さえました。隠れ家の類は発見できていませんが…」
「えっ…じゃあ子供は見つかったんですか?」
「いえ…それは…」
「そうですか…」
翔みたいな目に会っている子供がいるとしたら…
救い出してやって欲しかった。
「櫻井さんに証言する能力があれば、なにか子供のこともわかるかと思うんですが…」
由美さんの声は暗い。
翔にそんなこと聞けるわけもなかった。
ただでさえ安藤のことを思い出したらパニックになるのに…