第8章 tower
「安藤が電話しているところを小原が盗聴することに成功したんです」
それによると、安藤はどこかに多額の借金をしているらしく、その返済が滞っているのだと。
その返済の為に翔が必要なのだととれることを話していたのだと、小原が伝えてきたそうだ。
「それがどういうことなのか、小原ははっきりとは教えてはくれませんでした。
彼は、現職の警官ですからね…」
由美さんはふっと笑うと、鼻の頭を掻いた。
「そういう警官もいることは、忘れないでください」
「…わかりました…」
さっきから衝撃的なことばかり聞かされて、脳みそが破裂しそうだった。
翔がたどってきた辛い時間を、追体験したような気分だった。
…いや、もっと辛かっただろう。
それは翔にしかわからないことだ。
「ですから安藤は焦ってあなた方に手を出してきたんです」
「はい…よくわかりました」
智が顔を上げた。
「雅紀は大丈夫なんでしょうか?」
「はい。相葉さんは信頼できるところで匿っていますから、安藤も手出しはできないでしょう」
「潤は…」
「松本さんへも今は手出ししないでしょう。櫻井さんが近づかないかぎりは」
「…よく、わかりました…」
智が目を閉じて上を向いた。