第8章 tower
「数年前、会社経営をしている夫婦が殺されて、家は放火されました。犯人は富山県警の警察官でした。本人が自供しているにもかかわらず、不起訴になっています」
「えっ…」
「警察とは、そういうところもあるんです」
由美さんは頭を押さえた。
「放火殺人は、第一級の犯罪です。それを現職の警察官がやったとなると日本中の警察がひっくりかえります。おそらく何らかの意図が働いて、不起訴になったんでしょうね…」
だから、安藤も決定的な証拠もないので、今だ現職の警官であるのだと、由美さんは言った。
「それが今回の事件を生み出した温床なんだと思います」
続けて翔と安藤の関係も説明してくれた。
これも決定的な証拠がなにもでてこないので、推測が混じるとのことだった。
「翔さんは恵和が傾いた時に、売られたことは確かなようです」
当時恵和に勤めていた従業員からの証言で、ほぼ間違いないだろうということだった。
ただ、その売られた先が地下クラブなのか、それとも安藤に直接売られたのかはわからない。
いずれにせよ、安藤は翔に大金を払っているはずだと。
「そしてこれは、小原からの情報なんですが…」
由美さんの目が光った。