第8章 tower
「そして安藤。これが厄介です…」
安藤がいつ頃から恵和と繋がっていたのかはわからない。
いつの間にか結託して、カジノへ警察幹部を誘って、そして甘い汁を吸っていた。
そして10年前の事件。
この事件は安藤が恵和と繋がる以前と推測されるそうだ。
安藤が一人の少年を補導した。
その少年を言葉巧みに誘い込んで、安藤は強姦事件を起こす。
それが勤務先の所轄にバレて、安藤は処分されそうになるが、安藤にはカードがあった。
強姦した少年とは別に、もう一人子供を手の内に置いていたのだ。
強姦した少年は事件が発覚することを恐れた家族に匿われて、地方へ逃げていったそうだ。
だからこの強姦事件は有耶無耶になってしまったのに、子供は安藤の手に居るままで。
誰も手出しができなくなってしまった。
この子供の身元ははっきりしない。
ここが公安でも掴みきっていないところだ。
これだけはっきりしないということは、その子供の親は、その子供を探していないということになる。
そしてその子供は今だ安藤の手元にいる可能性が高いということだ。
「富山県警の事件をご存じですか…」
「え?」
由美さんの声が、一段低くなった。