第8章 tower
「おはようございます。あ、大野さんもこちらにいましたか」
はきはきと言うと、袋の中身をテーブルの上に広げ始めた。
「これ、家で作ってきました。食べて下さい」
「えっ…いいんですか?」
「家庭料理なんで、お口に合わなかったらごめんなさい」
テキパキと準備をすると、保温ジャーから味噌汁まで出してくれた。
「食べないと、保ちませんからね」
そう言ってにっこり笑うと、俺達に食事を勧めてくれた。
「いただきまーす!」
翔が元気よく言うと、俺達も後に続いた。
「「い、いただきまーす」」
由美さんの味付けは少し濃いけど、でもとても懐かしい味がした。
おふくろの味だ。
そういえば、最近おふくろとも連絡を取っていない。
親父と同じ福祉の仕事をしているから、忙しい。
だからつい連絡を怠りがちだ。
翔のことを紹介しなきゃいけないのに…
「由美さん、美味しいです」
「えっ…本当ですか?」
柔道と剣道とテコンドーの有段者の由美さんは、意外と家庭的だった。
「おかわりありますから、言ってくださいね」
嬉しそうに言うと、持ってきたポットから熱いお茶を注いでくれた。