第8章 tower
翌朝起きたら、だいぶすっきりとしていた。
ぐっすりと眠ったせいだろうか。
智も職場に電話して、休みを貰っていた。
「本当は潤の病院行きたいけど、それは止められてるしな…」
悔しそうに言うと、テレビを点けた。
ちょうど朝のワイドショーの時間だった。
潤のニュースが流れていた。
「えっ…」
大々的に報道されていた。
ひき逃げであるということ。
犯人は行方不明であるということが伝えられている。
「これ…いいのかよ…」
智が俺の顔をみる。
「わからないけど…もしかして公安は安藤を追い込みにかかってるのかもしれない…」
安藤があからさまな事件を起こした今、チャンスなのかもしれない。
もしも安藤が捕まったら…そうしたら翔に本当の自由がくる。
公安が動き出したということは、そういうことなのかもしれない。
安藤が翔をあきらめないのは、どうしてなのかわからなかったけど…
捕まってしまえば、そんなこともどうだって良くなるだろうと思った。
部屋をノックする音が聴こえて、由美さんの声がした。
ドアを開けると、由美さんが荷物を持って入ってきた。