第8章 tower
「ごめんね…翔、怖かったね…?」
翔が顔を横に振る。
「かずくんといっしょ…こわくない…」
「そっか…なら、良かった…」
翔の頬を手でくるむと、気持ちよさそうに目を閉じた。
「かずくん、こいびと。ぼくのこいびと」
嬉しそうに言う翔が愛おしかった。
「ん…恋人だよ…」
翔の頬を撫でながら、涙が止まらなかった。
智や潤、雅紀のことを考えたら、吐きそうなくらい泣けた。
俺達のせいで、あいつらにこれ以上迷惑かけたらだめだ…
そう思うのに、これ以上なにもできない自分がもどかしくて。
ちっぽけで…
「かずくん…?」
翔が起き上がって俺を抱きしめる。
「めめはれます…なかないで?」
「ん…うん…」
ぎゅっと二人で抱き合った。
なにもかも忘れたい。
その時、部屋をノックする音が聞こえた。
足音を潜ませてドアスコープを覗くと、智が立っていた。
ドアを開けると、疲れきった顔をしていた。
「どうしたの?」
「ん…」
「入って?」
智が部屋にはいってくると、翔が智に駆け寄る。
「さとくん」
「翔、風呂入ってたの?」
「うん!」
にこにこ答える翔の頭を智は撫でた。