第8章 tower
「安藤を捜査しているのは、公安のみです。安藤の所轄は丸ごと腐っています。彼は、それを叩き潰すために捜査しています」
すっと美穂さんが微笑んだ。
「だから、そう絶望しないでください」
俯いていると、翔が手を取った。
「かずくん、おなかいたい?」
「ちがうよ…翔…」
「ち、でた?」
「違うよ…どこも出てないよ?」
「じゅんくん、いっぱいでた…」
「うん…そうだね…でも、大丈夫だって…良かったね…」
ぎゅっと手を握ると、翔を抱き寄せた。
安藤の手が翔に迫った時、俺は翔を助けることができるんだろうか。
「かずくん…」
「美穂さん…」
美樹さんが呼びかけると、美穂さんは立ちあがった。
「とにかく今日は、私どもが用意するホテルに泊まって下さい。大野さんも」
「え?俺も?」
「安藤が相葉さんを付け狙っているってことは、あなた方のことは把握しているでしょうから…」
美穂さんが部屋を出て行くと、美樹さんがまた新しくお茶を出してくれた。
「調査は続行しますから。何かわかりましたら、またお知らせしますからね」
そう言って微笑む顔は、とても頼もしかった。