第8章 tower
「先程、潤さんの手術が終わりました。頭は打っていなかったのが不幸中の幸いでした。命に別状はありませんが、少し出血が多かったのが心配です」
そこまで一気に言ってから、美穂さんの表情は曇った。
「犯人は、安藤だろうと思われます。先程は、安藤が近づいているという情報が入ったので、あの場を離れようとしていたんです」
「美穂さん…」
俺はようやく声を出すことができた。
「今まではっきりとは聞いていませんでしたが、安藤は翔を狙って俺達のこと付け狙っているんですよね?」
「…すいません、そこは断定できていないんです。だけど、翔さんが理由の一つではあると思っています」
「他になにかあるんですか…?」
「これは…不確定情報なので、出せなかったんですが…」
美穂さんはチラと翔を見た。
翔は不思議そうな顔をしている。
「翔くんが、恵和のなにかを握っている。それを狙っているのではないかと」
「え…?恵和の…?」
「これは公安ルートからの情報です。はっきりとは聞かされていないので、お出しできなかったんです」
美穂さんはポケットからハンカチを出すと、智に差し出した。
智はびっくりした顔をしながら、それを受け取った。