第8章 tower
智は俺みたいに見失ってなかった。
まっすぐに俺と翔の事、見ててくれたんだ…
「お前たちが愛し合ってるのも、俺はよくわかってるよ…なんでお前たちのせいにできるんだよ…」
手を組んで額を載せた。
「俺は…潤が好きなんだ…」
「え…?」
「径と一緒だよ…やっぱ似るんだね…双子だからさ…俺も、ゲイなのかもしれない」
「智…」
「潤はさ、ドのつくストレートだよ…だけどさ、俺は下心があったって訳…だから、誰もことも責める気はないよ…」
そう言ったまま、また智は黙りこんでしまった。
ぽたりと涙が床に落ちた。
「俺…潤に、なんにも言えてない…」
「智…」
コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
事務所の方から、美樹さんと美穂さんが現れた。
「ごめんなさい、お待たせして…」
美穂さんが俺たちの近くで膝をついて座った。
「大丈夫ですか?皆さん」
慈しむように、美穂さんが微笑んだ。
俺たちはなんの言葉も返すことができなかったけど、美穂さんはそのまま言葉を続けた。
「ちゃんと、ご説明が終わってなかったので、お話しましょう…」
そう言って向かいのソファに腰掛けた。
俺と翔は智の隣に座った。
美樹さんは入り口のドアに凭れた。