第8章 tower
何時間もそのままでいた。
その間にも美樹さんには何度も電話があって、その度に美樹さんは部屋を出て行った。
ここは…静か過ぎる。
2時間ほどして、智が連れてこられた。
由美さんと一緒に来た。
智を俺の向かいに座らせると、由美さんはそのまま事務所を出て行った。
魂が抜けたようになっている智に、どう喋りかけたらいいのかわからなかった。
「智…?」
それでも呼びかけたら、智がこちらを見た。
「和也…どうしよう…」
智は手で顔を覆った。
「潤…意識が戻らないんだ…」
「智…」
「どうしよう…どうしよう…」
その時、翔が起きてきた。
「さとくん…」
翔の顔をみた智は、声を上げて泣きだした。
「どうしようっ…俺、まだ何にも伝えてないのに…」
身体を丸めて泣きだした智をただ、抱きしめた。
「ごめん…ごめん智…」
ふと温かいものが頬に触れたかと思うと、翔も智を抱きしめていた。
二人で智の小さな背中を抱きしめた。
「ごめん…俺達のせいだよな…ごめん…」
智が顔を上げた。
涙を拭いもしないで、俺の顔を見つめた。
「違うっ…和也たちは悪く無い…悪いのは犯人だろ…翔をあんな目に合わせた奴らだろ…勘違いすんな!」