第7章 storm
「お、おちゃめなんですね…村上さんは…」
「あ、美穂って呼んで下さい。あと、この二人も下の名前で、美樹、由美と呼んで下さい」
「え?」
「ちょっと色々事情がありまして、苗字をあまり外で広めたくないんです。なので、ご依頼主様からは普段から下の名前で呼んで頂いています」
美穂さんはトレンチコートの裾を直した。
「以前の職業が職業だったもので…」
「は、はあ…」
「では、以後よろしくお願い致します」
それから俺達は、昨日のことと今日の雅紀の兄さんの電話の様子も話した。
美穂さんはボイスレコーダーを見つめながら暫く考え込んでいる。
美樹さんはタブレットに何か打ち込んでいる。
由美さんは電話をしに廊下に出て行った。
「…で、依頼主を変更されたいということですね?」
「あ、はい。雅紀が出てくるまでは…」
「わかりました。それについては目処がつき次第で構いません。相葉さんの様子で決めていただいて構いません」
「あ、ほんとですか?」
「できれば相葉さんが最初から最後まで依頼主のほうが助かりますから…」
「わかりました」
「しかしおかしいですね…麻取がそんな危ない橋渡るかしら…」