第2章 sanctuary
「かずくん、ぼくのこときらいですか?」
「えっ…何言ってんだよ…お前…」
翔の顔を無理やりこちらに向けさせると、涙が頬を伝っていった。
なんだか、とても悪いことをしたような気分になった。
同時に、胸がなんだか変な感じになった。
「ばかだな…嫌いも好きもねえよ…」
再びお湯に入って、翔の手を握った。
「気持ちいいことなんかしなくてもいいんだよ?」
「…ほんと…?」
「そうだよ。そんなことしなくても、翔のこと嫌いにならないよ?」
「うん…」
ぽたぽた翔の涙が水面に落ちていく。
その涙を、俺は拭うことができなかった。
とても、綺麗だったから。
「さ、身体洗おう?俺の背中流してくれよ?」
「うん、わかったぁ…」
翔は俺を見上げると、にへっと笑った。
「いい子だ」
そう言ったら、もっと嬉しそうな顔をした。
ナイロンタオルに石鹸をこすりつけて、アワアワを翔にそっと押し当てた。
ロープの痕が痛々しくて、強く擦れなかった。
翔の全身を洗うと、今度は翔が俺の背中を洗ってくれた。
「かずくん、あんよもあらいます」
「いっ…いいってば…」
「んーっ」
ナイロンタオルを俺に届かないところまで上げて、翔はいやだと抗議してきた。
子供か。