As well be hanged for .....
第10章 女は投げやりに 男は完璧に 後篇
今まで、本当の笑顔なんて家族にしか見せたことなかった。
でも、不思議なことにシエルやセバスチャンには自然とほほ笑む事が出来る。
それは契約している悪魔だからなのか、執事として優秀だからなのか。
パーティーに参加する時、パートナーを同伴したいと思った事は一度もない。
会場で素敵なカップルがいたとしても、何の興味もなかった。
彼女達のように振る舞えば自然とパーティーに馴染めるのか。程度にしか考えていなかった。
隣に座る自分より幼く見える少年。
彼がもし自分と同い年で、パーティーで自分の同伴者だったら、自分は彼女達のように楽しく振る舞えるのかもしれない。
エドガー主催のパーティーに行った時、ちょっと大人っぽかったシエルの隣で、自分は彼女たちに嫉妬していたのだな。と初めて知った。
「契約した悪魔が、貴方で良かった。」
「ふん。」
真実なんて知らなくていいから、シエルともっと一緒にいたい。
でも、徐々に締めあげられていく首に耐える気概は自分にはない。
「シエルはちょっとした事で動揺しないでしょ?見習わなくっちゃ。」
「経験の差だろう?お前だっていつかこうなる。」
シエルは自分でそう言って間違いに気が付いた。
そうあってほしいと願う自分がいた。でもそれは間違いだ、彼女の未来は自分の手によって断たれるのだから。
「そうなる前に私はきっと本当の事を知って、貴方に食べられる。」
でしょう?とシエルを見つめる瞳は、大人びていた。
「…そうだったな。なら別に身につける必要はない。僕がいるからな。」
「じゃぁ、そういうとこはシエルに任せるわ。」
「あぁ。」
シエルは少しだけ、自分が悪魔で彼女と契約してしまった事を後悔した。