As well be hanged for .....
第10章 女は投げやりに 男は完璧に 後篇
どうしてどうしてどうしてどうして。
ウリエの頭の中にはその言葉しか浮かんで来なかった。
ようやくたどり着いた客間では、シエルが無理やり木箱を開けたのだろう破片が飛び散っていた。
ふんわりと漂う新鮮な花の香り。
香りにつられるように、足が勝手に進む。
「姉さま……どうして。」
箱の中身は大量の白い花と、ウリエ・フェンベルグの姉、リエラ・フェンベルグの遺体。
死に化粧を施され、何か薬品でも塗布してあるのだろうか、まるでただ眠っているだけのように見えるリエラの肌。
まるで、美しい彫刻のよう。
「姉さま、姉さま!」
ウリエは花弁が飛び散るのも構わず姉の肩を掴み、揺する。
しかし、そんな事をしてもリエラの髪が乱れるだけだった。
シエルが彼女の肩にそっと触れ、優しく引き戻す。
「セバスチャン。彼女をもう一度綺麗にしろ。」
「はい。」
シエルはセバスチャンに、乱れたリエラを木箱から出し、きちんと棺桶に入れて綺麗にしろと命令し、ウリエを連れて一度客間を後にした。
ふらふらと焦点の定まらないウリエをひとまずデッキへと連れ出した。
夏の気持ちのいい風に吹かれれば少し落ち着くだろう。
シエルは小さく震えるウリエの肩を撫で続けた。
「どうして……」
「病死。と書いてあった。」
「びょうし。」
そんなはずない。姉さまは風邪も引いたことないのに。嘘だ、嘘だ!そう言って暴れる事も出来た。
けれど、目の前の現実を真っ直ぐに受け止められるほど、素直でも可憐でもない。
夏のピリッとした風がさらさらとウリエの髪を攫っていく。
どうしてどうして、と脳を霞めるもやの中心では、一つの考えがもしかして、ではなく確信だと告げる。