As well be hanged for .....
第9章 女は投げやりに 男は完璧に 前篇
部屋を出ると、廊下のオブジェのように静かに待っていたセバスチャンがおり。
三人は会場には戻らずに、裏口からこの会場を後にした。
「ぼっちゃん。久しぶりの社交界は如何でしたか?」
「随分気が抜けた。まるで子供だましの様なパーティーだな。」
面白くない。と不貞腐れたシエル。
ウリエはそんなシエルにクスクスと笑う。
「今の流行りは社交界じゃないのよ。電子の世界。ボタン一つで秘密を暴露したり、情報を握ったり、仲良くしたり、貶したり。シエル達の頃より情報の腐りは早いし、生産消費も随分早い。」
「そうですね。ついさっき起きた事件は、すぐにでもネットで流れますし。この国の真裏で起きた事件ですら、一日と経たず新聞に載ります。」
「誰が何処で何をしているかを監視するのは、科学の目であって人間の目じゃない。欺く事も偽ることも難しい。」
ウリエはそう話しながら、先ほどエドガーから受け取っていた封筒をびりびりと破き始める。
何を始めるのだろう。とじっと見ていると、破いた封筒の裏から小さな電子チップが現れた。
「そして。その情報は時折、古典的な手法で他人の手に渡る事もある。」
ウリエはチップをつまんでシエルに見せ、どうだ!と言わんばかりにウインク。
きっとその中には警察からの本物のご褒美が入っているのだろう。
「さっきの小切手は擬態か?」
「いいえ。これはお駄賃ね。大した金額じゃないし、このまま何処かに寄付でもするわ。」
「では、すぐにタウンハウスに戻って見て見なければなりませんね。」
「えぇ。」
「シエル、背が高い方が素敵だったわよ。」
「え!?」
「おやおや、良かったですねぇ。ぼっちゃん。」
(女は投げやりに 男は慎重に 前篇)