As well be hanged for .....
第9章 女は投げやりに 男は完璧に 前篇
「アレはそれなりに規模のあるグループです。わかっていると思いますが、我々警察が動けば、嗅ぎつけられる可能性は十分。あまり、貴女の手を煩わせる事は控えたいのですが。」
「そうね。出来ればそちらで片を付けて欲しいところですけど。今までに感じた事のない危機感を女王は感じていらっしゃられるようですので。」
「えぇ。是非そちらで地ならししていただければ。」
出る杭は打たれる物ですしね。とエドガーは年相応に皺のあるこめかみをとんとんと叩きながら、目を細めウリエを見つめる。
こんな小娘が血統種か。とエドガーは威嚇する。
レオーネンの一族は警察と政府、それから影の犬を繋ぐ一本の鎖だ。
長い事関わり合ってきた、彼女の父ファシル・フェンベルグ。
彼が忽然と姿を消したのは記憶に新しい、表の事件として処理をしたのはエドガー本人で、今回の一連の事件にかかわってきている「義足の男」がもしや、と思っている。
目の前の小娘に、この考えはあるのだろうか。
エドガーを見つめる宝石の様な緑の瞳は、獲物を追い詰めるハンターのようにギラギラと艶やいている。
「では。失礼するわ。」
「待て。一つだけ聞きたい。」
立ち上がったウリエとシエルを追う様に、質問をぶつける。
「「義足の男」が貴女のお父様だとしても、躊躇なく消す事が出来ますか?」
「えぇ。もちろん。」
シャンとした背中から帰ってきた返事は、一瞬の迷いもなかった。
静かに部屋を出ていった二人。
エドガーは大きく息を付き、震える指先を擦り合わせる。
いつの間にか緊張していたようだ。
自分も片足突っ込んでいるようなものだが。と言い聞かせ、呟く。
「まるで悪魔だな…。」