As well be hanged for .....
第3章 仕事は真面目に 趣味はほどほどに
「シエルは剣のおけいこ、しないの?」
「必要ない。」
男の子のような服に着替え剣を持つウリエ。
その横では椅子に座ったままつまらなさそうにこちらを見ているシエル。
突っ立っているウリエの、艶のある黒みがかった深緑の長い髪をお団子にしているセバスチャンが、二人の対照的な様子を見て口元を釣り上げる。
「まるで中身が入れ替わってしまっているようですね。お嬢様はお身体を動かす事がお好きで、ぼっちゃんは相変わらず室内飼いの猫のよう。」
「別にお前がいればそんな事をする必要はないだろう。」
「楽しいのに、ねぇセバス。」
「えぇ。楽しいのに。」
ウリエが悪魔のシエル・ファントムハイヴと契約をしてから数日。
二人はすっかり仲良くなり、セバスチャンの趣味か似たような服装をする事が多くなった。
出掛ける時も仲良く手をつないで、シエルが迷わないようにとウリエが彼を引っ張る。
まるで、双子か姉弟のよう。
「では、行きますよお嬢様。」
「えぇ!」
女王の番犬であった父の背中を追って育ってきた彼女は、影に対抗できるようにと戦う術や身を守る術を身につけて来た。
それは意外にもセバスチャンが褒めるほどの腕前である。
「ぼっちゃん。これではどちらが守られる側なのか心配になりますよ。」
そうセバスチャンが言うぐらいに。
まるでシエルが置いてきたすべてのモノを拾ってきたかのよう。
けれど、似ているところも多くあった。
服の趣味や、食べ物の好み、どちらも意地っ張りで少しばかりプライドが高い。
「僕にチェスでは勝てない癖に。」
「じゃぁ、なによ。私に剣術で勝てないからって苦手なもので勝負するのやめてよ。」
「得手不得手があるのは当たり前だ。元々体を動かすことに向いていない。」
「だったら、お互いにそれなりに出来るもので勝負するのが筋ってものじゃないのかしら。」
喧嘩も日常茶飯事。