As well be hanged for .....
第2章 出会いは唐突に 契約は慎重に
「あぁ。昨夜のお嬢様のお仕事の件ですが。つつがなく完璧にこなし、報告も済ませておきました。」
「貴方も何者?」
「アクマで執事です。」
妙な言い回しをする執事ね。と、視線を向けた執事も赤い瞳。
「やっぱり貴方も悪魔なの?」
「えぇ。」
「じゃぁ、貴方も私の魂を?」
「いいえ。私はぼっちゃんと契約をしております。」
「悪魔と悪魔って契約するの?」
「複雑な事情があるのです。」
なんともこんがらがりそうな関係だが、夢ならあるかもしれない。と少女は納得する。
「私は悪魔と契約していて、私と契約した悪魔は悪魔と契約していて、悪魔と契約した悪魔は悪魔の執事なのね?」
「さすがお嬢様。飲みこみが早いですね。」
夢なら。そう少女は自分に問いかけ、もう一度そのエメラルドの瞳を強く少年に向けた。
「ねぇ、本当に私の望みを叶えてくれるの?」
「あぁ。そう言う契約だからな。」
「わかった。信じるわ。」
少女の強い瞳に、少年は紅茶のカップを持ちあげて少女に向かって乾杯の仕草をする。
少女も慌てて紅茶のカップを持ち上げ、カチン、と小さく音を立てて少年のカップと自分のカップを合わせた。
少しぬるくなった紅茶に少年は眉をひそめるが、今は文句を言っている場合ではない。
彼女が自分を信用する。と言ったのだから、このチャンスを逃す訳にはいかない。自分に心を開いてくれなければ困るのだ。
「一つだけ忠告して置く。絶対に死なないという保証はないからな。あくまでも全力で守るだけだ。セバスチャンがな。」
「あなたじゃなくて?」
「坊ちゃんは戦闘に不向きな方ですから。私が二人をお守りいたします。」
主人の食事のためならば、心にない人間だって守る。
目の前の魂をただただ食すだけで、興味を一切示してこなかった主人が、お前の願いを叶えてやろう。とまで言わせた人間の魂だ。
その食事が始まる前も楽しみたい。
「えっと、よろしくお願いします。シエル・ファントムハイヴ様。」
「シエルで構わない。よろしく頼む、ウリエ。」
こうして、少女と悪魔とあくまで執事の不思議な生活が始まる。
「ところで、ここのお手伝いさん達は?」
「ホームに戻って頂きました。」
「え?」
(出会いは唐突に、契約は慎重に)