As well be hanged for .....
第9章 女は投げやりに 男は完璧に 前篇
会場には、カジュアルだがラグジュアリーな装いの人たちが入口から中へと吸い込まれていく。
「では、私は車を置いて参ります。いいですかぼっちゃん。」
「もうわかった。くどいぞセバスチャン。」
扉を開けて、シエルの降車を手伝う際に小さく釘を刺してみる。
ウリエが車から降りれば、シエルは今朝セバスチャンに叩きこまれたように、ウリエをエスコートする。
会場へ消えていく二人の背中を見送るセバスチャン。
どうあってもあの二人は爵位持ち。
体裁や体面を保つ、という点においては他の大人たちの軍を抜く。
車を降りて一歩人の目に晒されたなら、驚くほど優美で目を引く。
二人が見えなくなると、セバスチャンはファントムハイヴ家の執事らしく、自分の仕事に取り掛かった。
会場には意外と二人よりも小さい子供も多く、変に目立たなくてホッと胸をなでおろす。
ウリエは隣を歩くシエルに少しドキドキしていた。
初めて見たちゃんとした正装。底の厚い靴を履いているのか、自分より高い身長。
顔はさすがに童顔のままのようだが、堂々として自分をエスコートしている大人っぽいシエルに驚きを隠せない。
受付を済ませ、会場に入り、顔見知りに挨拶をすませる。
ウリエは自分をエスコートしているシエルを紹介する際、自分の契約している悪魔。と紹介するわけにいかないので、ボーイフレンドだと紹介する。
その事が妙にくすぐったい。
嘘じゃなければいいのに。と思っている事をシエルに悟られる訳には絶対にいかなかった。
「随分無礼講だな。」
「ええ。昨今のパーティーはおしゃれしに来るだけの様な所よ。」
「ふぅん。」
裏に思惑を隠している人も少なからずいる。しかし、単純に気飾ることを楽しみ、友人や恋人と共に遊びに来ている感覚の人間が多い。
もちろん下心ありきでこのパーティーに参加している男や女ももちろんいた。
しかし、シエルの目にはだいぶクリアに見えるし、堅苦しく重々しいドロドロした物には全く見えなかった。
そして、自分のようにきちんとレディをエスコートしている男が少ないことには少し驚いた。
腕に絡んだウリエの手もどこかぎこちなく慣れない様子なのは、エスコートをされた事があまりないからだろうか。