As well be hanged for .....
第9章 女は投げやりに 男は完璧に 前篇
「では。お車のご用意を。」
セバスチャンは二人がエントランスのソファーに座るのを見届けて、玄関から出ていった。
ウリエは髪の色にあった、明るいグリーンとライムイエローのすねの丈のロングドレス。スカートには申し訳程度にレースとフリル。
首にはゴールドとエメラルドの細く小さいネックレスを付ける。
シエルはネイビーのスーツで、ドレスシャツはフリルの効いたホワイト、ネクタイではなくリボンタイ。少しだけ昔の趣を感じるものになっている。
髪型はセバスチャンがセットしており、シエルは小さなシルクハットと橙の花、レースで眼帯をしている片目を隠す。
ウリエもアップした髪に、シエルとお揃いで花とレースを使ったコサージュで飾っている。
「さっすが、ファントムハイヴ伯爵。現代の服も着こなしてるわ。」
「……これしかなかったんだ。お前は、そう言う服を着てようやくフェンベルグ伯爵家の人間だな。」
「地位なんてあってないような物だもの。可愛ければそれでいいの。」
あわや休戦していた戦争が始まるところで、セバスチャンが現れ二人を車に乗せ会場まで出発した。
「お二人とも。くれぐれも会場で無様なお姿を晒しませんよう、心に刻んでください。」
セバスチャンは、いくら注意しても無駄なのだろう。と思いながらも小言が口から流れ出て止まらない。
経験した事のない形式のパーティー。
一緒にいるウリエがそれなりに助けてくれるだろうと思ってはいるが、あのプライドの高い自分の主のことだ、心から会場で無様なお姿を晒さないでくれ。と願うばかり。