As well be hanged for .....
第9章 女は投げやりに 男は完璧に 前篇
いつにも増して静かな夕食、カチャカチャと食器の鳴る音ばかりが響く中。
「あっ!」
と大きな声が響いた。
「ウリエ…」
「ご、ごめん。」
「どうかしましたか?お嬢様。」
「うん、これ。すっかり忘れてたわ。」
ウリエのサマーカーディガンのポケットから、クシャリと折れ曲がった一通の手紙が出て来た。
セバスチャンがそれを受け取り、失礼します。とその場で封を切った。
もちろん中から出て来た手紙もしわくちゃで、シエルは眉を寄せた。
「招待状のようですよ?エドガー・レオーネン様からですね。」
「エドガーから。」
「えぇ。ご息女ツティア・レオーネン様のお誕生日パーティーが催されるそうです。どうされます?」
「行くわよ。」
一も二もなく、参加する。と当然のように言ったウリエにセバスチャンは少し驚いた。
自分の主なら、面倒くさい。と一蹴するだろう招待状だが、意外にも今の番犬であるウリエ・フェンベルグという人は社交的であるらしかった。
「お前、ただの誕生日パーティーだぞ?」
「うん。お祝い事でしょ?普通行くでしょう。」
「いや…そうか。」
今は昔と違い、爵位や階級がほとんど意味をなさない現代に置いて、格式ばったパーティーと言うのは少ない。
さすがにドレスコードはあるだろうが、フリルやリボンたっぷりな古めかしくて重いドレスを着ていく人はほとんどいない。
だいたいはイブニングドレスかロングドレス。
しかも、たかが金持ち貿易商の子供の誕生日パーティー、王族貴族が来る訳でもなく集まって飲んで食べて騒ぐ、あとは自分の資産を見せびらかし、自分達がどれだけお金と地位を持っているかの自慢だ。
「シエルも行きましょう?」
「え!」
「え?」
「僕はいい。」
「えー、レディを一人でパーティーに行かせるなんて、ファントムハイヴ家の名が廃るわよ?」
「ぐ……」
ウリエは、してやったり。とにやける顔を抑えきれず。
シエルは、こう言う時に限って名前を出す!とぎりぎりとフォークを握りしめる。
セバスチャンは、久しぶりに腕がなる。とちょっと上機嫌だった。