As well be hanged for .....
第9章 女は投げやりに 男は完璧に 前篇
「それと、ごく僅かでしたが香りの方も。」
「……「義足の男」どうやらこいつを捕まえない限り、続く可能性も否めない訳だな?」
「えぇ。今のところ三件の事件に関連している証拠は、すべて彼だけです。」
リビングで、シエルとセバスチャンがテーブルでPCとタブレットと新聞とにらめっこしている横で、ソファーに座るウリエは一人クッションを握りしめじっと壁を見つめている。
シエルはそんなウリエを横目で見ながら、一言も声をかける事はしなかった。
義足の男の条件が、彼女の父親の死亡した時の見つかっていない身体と一致している。
ただ、彼女の父親の死亡現場の写真を見て、これでも生きていると考える方がどうかしているとは思う。
十中八九一般人が見てもこれは死亡していると言わざるを得なかっただろう。
仮定の話だとして。
義足の男=ウリエの父だとすれば、こんな事件を起こす理由に見当が付かない。
自分達の理解の及ばないところの話なのかもしれなかったが、だとしても、彼女の話す父親からは想像もつかなかった。
優しく、強く、聡明。
それは彼女たちを騙すための仮面かもしれない。
どれもこれも、「義足の男」を捕まえれば済む事だ。
「巣でも見つかれば話は早いんだがな。」
「もう一度、あのサロンを調べてみましょうか。」
「あぁ。」
作戦会議も一時中断となり、真っ赤な夕日がダイニングに差し込む中夕食となった。