As well be hanged for .....
第2章 出会いは唐突に 契約は慎重に
「確かに、信じられないのも分かります。しかし、現実に私たちはここに居るのです。」
「僕は元々お前のように人間だった。ただ、理由があって悪魔にはなったが。」
ここは夢だ。
少女はポケットの中の電子端末を探す。しかし、指先に触らないそれに、ふとあれはベッドサイドに置きっぱなしにしてきてしまった事を思い出す。
少女は夢から覚めるべく、頬をつねって見る。
「なに馬鹿な事をしてるんだ。夢なんかじゃない。」
少女を馬鹿にするように少年は笑う。
「悪魔なんて現実にはいないわ。」
「いや。いる。」
紅茶のカップを持ちあげる少年の爪は黒く、マニキュアで塗りだしたような色ではなかった。
瞳の色だって普通の人間だとしたらおかしい色だ。
アルビノという事もあるが、少年の髪は紺色、執事服も赤い瞳をしているが黒髪だ。
人間ではおかしい。
「お前が強く願ったから僕が来てやったんだ。感謝しろ。」
余裕綽々で上から目線の少年。
ようやく昨日の出来事を思い出した。
与えられた仕事を失敗し、後は自分の命が尽きるのを待つだけ。と思っていた矢先、少年が現れ契約をしろ。と。
「……契約。あれ、何なの?」
「契約は契約だ。お前の望みが叶った暁には、魂を貰う。」
「誰の?」
「お前の。」
「悪魔。」
「あぁ、そうだ。」
今すぐ契約しないとお前は死ぬ。と言われて、少女は契約を交わした。
しかし、その時そんな事は言っていなかった。
説明の義務を怠った、これはもう契約不履行にしてもらわなければ。と少女は息を吸う。
しかし、先ほど自分の目で確かめた自分の胸の契約印。
口約束の様な軽い物ではなさそうで、やはり夢だと思うほかなさそうだった。