As well be hanged for .....
第7章 嫉妬は秘密に 紅茶は一緒に 後編
子供たちはしきりにぴょんぴょん跳ね、ピエロの手にある鉈を奪い取ろうと必死になる。
「はいはい。順番ね。このタライに一人ずつ中身を入れて行ってねぇ。」
並んだ子供たち、先頭の子供にピエロが切れ味の良さそうな鉈を手渡すと、子供は躊躇なくその鉈を胸に当て、勢いよく付き刺し真下に押し落とす。
ベチャベチャ!と中が流れ出てくる。
当然、子供は痙攣しその場にくずおれる。
それでも、周りの子供たちはわぁわぁと楽しそうに騒がしい。
明らかに狂気。
一人分の新鮮な子供の臓器が入った盥は、すぐに別室に移されシエルの視界からは消える。
このままじゃまずい、出入り口には鉈を持ったピエロがもう一人いる。
頭の狂ったウリエを連れて逃げ出すには、目立ちすぎる。
ここではシエルやウリエは年長だ。
シエルは顔に笑顔を張りつけたまま、歯を食いしばり、セバスチャンを呼びつける。
早くしろ早くしろ早くしろ。
「うーん!みんないい子だねぇ!」
列が進むペースは明らかに早い。
いやがる子供は一人もいない。
鉈が重くて持てない子供は、ピエロが素早い手つきで中身を出して行く。
流れ出る血はそこら中に広がり、床に敷かれた赤いカーペットへ染み込んで行く。
このカーペットの赤は、そう言う事か…。
「いい子いい子!ピエロさん嬉しいよぉ。」
まずい!!次だ!次はウリエの番だ!
早く来いセバスチャン!
『シエルは剣のおけいこ、しないの?』
こんな時に、以前ウリエが稽古に誘ってくれた時の事を思い出した。
彼女の剣の腕は上の上。
長剣も短剣も自分の腕のように使いこなす。
『これではどちらが守られる側なのか心配になりますよ。』
自分は非力だ。
今ここで、ウリエの手から鉈を奪い、ここにいる二人のピエロを始末する方法が思い浮かばない。
いや、思い浮かばせる事は出来る。
でも、実行する事は出来ない。
自分にはその技術がないから…。
悪魔なのに、僕は本当に『あくまでぼっちゃん』でしかないのか。