As well be hanged for .....
第6章 嫉妬は秘密に、紅茶は一緒に 前篇
夢なのにやけにリアリティがある。
幾度となく見て来たシエルの夢、いなくなるばかりの日々に新しくやってきた友人であり、自分の魂を捧げる相手。
胡散臭くて堪らなかったけれど、今では側にいなければ不安になる。
魂を捧げるだけ。と割り切っていたのに、いつの間にかこの心も一緒に持って行ってほしいと思う様になった。
「ウリエ。」
その、優しく自分の名前を呼んでくれる声。憐れむような慈しむような、はたまた美味しそうな食事を見るような目で自分を見つめてくれる。
「僕が守る。」
「うれしい。」
ウリエは瞼を惜しむように閉じて、本物の夢の中へ沈んでいった。
シエルは握っていた手をそっと彼女の胸に戻し、乱れた髪を整え、その幸せそうな寝顔を見つめる。
勿体ない。そう思う反面、永遠にこの寝顔を自分の物にしたいという醜い欲。
月明かりに照らされる彼女の首筋に、ひとおもいに噛みつきたい衝動にかられるが、ギュッと手を握りしめ耐える。
「僕の物だ。」
エメラルドは僕の物だ。
「おや、ぼっちゃん。こんな夜中にどちらへ?」
「トイレだ。」
「悪魔はもよおしませんよ?」
「………。」
(嫉妬は秘密に 紅茶は一緒に 前篇)