As well be hanged for .....
第6章 嫉妬は秘密に、紅茶は一緒に 前篇
ぱたん。と静かに閉まった扉、タスタス。と遠のいていくセバスチャンの足音。眠る必要の無いシエルは耳を澄ます為に目を閉じる。
もう、行ったか?
そろりとベッドを抜け出て、ウリエとお揃いのカーディガンを羽織る。
…お揃い。
嫌な気はしない。むしろ、同じものを着ている不思議な優越感がある。
彼女が自分になったようで、自分が彼女になったようで。
同じ気持ちかもしれないと錯覚してしまう。
たどり着いたウリエの部屋、ゆっくりノブを回して、覗き見る。
「……。」
寝ている。
静かに部屋に入れば、ウリエはベッドに埋まって深く眠っていた。
いつもきちんと結ってある深緑の美しい髪は枕に散らばり、隙間の開いたカーテンからの月明かりに照らされていた。
恐る恐る、髪へ指を伸ばし、スルスルと触れてみる。
「ぅん?…シエル?」
薄らと瞼を開けて、眠たそうなエメラルドグリーンの瞳に月の光を反射させる。
まだまだ夢の中で視線が定まらないのか、重たそうに瞬きをする。
「どう、したの?」
「夢だ。」
「ユメ」
シエルは跳びはねた心臓の音をかき消すように、慌てて夢だと口走ってしまった。
でも、本当は、自分が彼女の目の前にいる事が夢では無くて現実だと知ってほしかった。
「ユメに、貴方が出て来たのは何回目かしら。」
寝転がったまま手を伸ばすウリエ、その手はシエルの頭へ伸びる。
「あのね、夢だから言うけど。」
シエルはウリエに頭を撫でられたまま、彼女を夢から覚まさないように、黙ったまま撫でられ続ける。
「あの時、貴方が現れた時、嬉しかったのよ?」
「嬉しい?」
「地獄にも話し相手がいるのね、って。」
ウリエはシエルの髪を指に絡め梳く。
シエルはウリエの手を止め、細い手を握る。