As well be hanged for .....
第6章 嫉妬は秘密に、紅茶は一緒に 前篇
帰りの車内でも、ウリエはあーでもない、こーでもない。と一人首を捻る。
シエルはタウンハウスに着いて、室内着に着替えてからようやくウリエを呼びとめた。
「前に僕が言った事で、焦っているのか?」
「まえに?」
少し、咎めるようなシエルの口調にセバスチャンも驚き、紅茶をいれていた手を止めた。
今回の事件の資料や情報をテーブルの上にばらまいていたウリエは、不機嫌なシエルをキョトンと振り返る。
「姉の事が心配なら、女王へ何かと理由を付けて会いに行けばいいと言った事だ。」
図星をつかれたのか、彼女は少し焦った表情をする。
まるで、隠しごとのへたくそな子供だ。
「焦ると見えるものも見えなくなるぞ。お前のやる事はなんだ。姉を助ける事じゃないだろう。女王の憂いを晴らす事だ。」
「わかってるわよそんなこと!」
ダン!とテーブルを叩きつけるウリエ。その衝撃で、テーブル上に広がっていた紙が何枚かパラリと落ちる。
「わかってる!ちゃんと仕事をしなきゃいけない事も!でも、姉さまが心配なの!嫌な考えばかりが先に行って、どんなに振り払ってもすぐに浮かんでくるの!」
ふらりと膝の力が抜けたのか、その場に倒れ込みそうになるところをセバスチャンがすかさず抱きとめる。
ウリエは力なく俯き、掠れる声で言葉を続ける。
「女王の遊びによる薬物汚染…一家殺人事件の義足の男…私に嫌な予感をさせるモノがいっぱい…。」
ぽろぽろ、と彼女の瞳からは苦しそうな涙が流れる。
セバスチャンはウリエを優しくその場に座らせた。
ひっくひっくとしゃくる彼女、セバスチャンはシエルへ視線を向けるだけで何も言わない。
これは、彼女と彼女の契約した悪魔の話だ。