As well be hanged for .....
第6章 嫉妬は秘密に、紅茶は一緒に 前篇
午後、お出かけ用の服に着替えて出発する。
エドガーとトーマスの二人の刑事と待ち合わせてしているのは、先日偶然に出会ったカフェだ。
シエルは先日とほとんど変わらない人込みの中を、再度歩かされて不機嫌。
「メールひとつで済むのに、わざわざこんな街中のカフェじゃなくても…。」
「昨今では、個人メールすら誰が見ているかわかったものじゃありませんからね。古典的な方法を選んだのでしょう。」
「私、結構ここ好きよ。」
カフェに付くと、刑事のくせに気取ったスーツのエドガーと新人風味が抜けないトーマスの二人が既に待っていた。
大人の男が三人に、少年と少女。非常に奇妙な組み合わせだ。
「挨拶は抜きでいいですね?ご令嬢。」
「えぇ。良いわよ。」
エドガーがトーマスを促し、一冊のファイルをテーブルに差し出した。
一番に手に取ったのはシエル。その横からウリエがファイルを覗きこむ。
中に書かれていたのは一昨日から行方不明とされている子供たちのプロフィール。
男の子も女の子も同じくらいの人数、年齢は5歳から17歳と幅広い。
他には特に共通点などはなさそうだった。
「住所も、行方不明になった場所も、時間も、家族構成も、全員に共通する物はありませんでした。」
「共通の場所に通っていたとかも?」
「えぇ。まぁ、年齢を見ていただけたら分かると思いますが…ご令嬢、貴女も狙われているやもしれませんね。」
厭味交じりのエドガーの言葉に、隣に座るトーマスが、僕が守ります!と騎士道を振りかざす。
「刑事さん達のお手は煩わせませんよ。」
「ほう。ただの執事さんに何が出来るってんです?」
「えぇ。たかが執事されど執事、あくまで執事ですから。」
シエルとウリエは目を合わせ、笑いをこらえる。
そんなお子様二人をセバスチャンは横目でにらみつけた。
「じゃぁ、このファイルは少し借りていくわ。犯人からの要求があれば少しはこの事件も進みそうな気もするのだけれどね。」