As well be hanged for .....
第5章 砂糖は多めに 塩は少なめに 後篇
ウリエ、シエル、セバスチャンの三人は活気づくロンドンの街へと繰り出していた。
車に乗っていては仲通りまで入って行けない。
仕方なく人込みを分けながらしばらくうろつく。
「セバスチャン。そろそろ休みたい。」
「ぼっちゃん。まだ歩き初めて5分も経っていませんよ?」
貧弱ですね。と厭味が小さく飛ぶ。
シエルといつものように手をつないでいるウリエが、セバスチャンを睨むシエルを励ます。
「この先にテラスのあるカフェがあるわ。そこまで行きましょう?」
「…わかった。」
まるで姉と弟のようだ。と先頭で人をかき分けながら歩くセバスチャンは笑う。
シエルは、人間として生を終えた姿からは、幾分か大人に近づくような成長はしている。
元より幼く見える顔立ちの所為で、早々成長したようには見えないが、長く側にいるセバスチャンにはその違いがハッキリわかる。
ようやくウリエの言うオープンカフェにたどり着き、アイスティーで汗ばんだ体を冷やす。
セバスチャンは、黒服のまま二人の後ろに立っていては不審に思われるので、今日ばかりはスーツに身を包み、ウリエとシエルの保護者を装う。
シエルもウリエも初夏に似合いの格好をして、出掛けに来た体を装っている。
「それにしても人が多いな。鬱陶しい。」
「ホントね。平日なのに。」
ウリエやシエルの様な子供の姿はほとんどない。
平日子供たちはスクールに通うのが世の常である。
ではなぜ、ウリエはスクールに通わないのか?それはもちろん、お金持ちだから出来る、専属の家庭教師と言うものがいるからだ。
今はセバスチャンがその家庭教師を務めている。
「こんなに人が多いと、上手く見つからないかもしれませんね。」
「ふん。使えない執事だな。」
「では、ぼっちゃんが不甲斐ない執事の私めにご師事を。」
「……。」
暑さのせいなのか、ただの遊びのつもりなのか。ウリエを挟んでシエルとセバスチャンが小競り合いを起こす。
ウリエが、そろそろ止めた方がいいかしら。と思っていると、目の前の人込みの中から先日会った二人の男が現れ、こちらに近づいてきた。
「奇遇ですね。伯爵令嬢。」
「あら、エドガー。とトーマス。」