As well be hanged for .....
第5章 砂糖は多めに 塩は少なめに 後篇
「私の嗅いだ匂いですが。前回の大麻サロンで嗅いだ匂いと同じでした。あのサロンの常連か、もしくは経営者。」
「片足の男は?」
「えぇ。痕跡がありました。そして、」
セバスチャンは唐突に、左足の靴と、シエルの杖を持ちだした。
「杖?」
「はい。片足だけの足跡を残して行った男は、片方の足が義足です。」
テーブルの端に左足の靴を置き、右足があるだろう所にはシエルの杖を立てる。
「じゃぁ、犯人の中に片足が義足の男がいると言う事なの?でも、そんな目立つ男ならすぐに見つかりそうね。」
「それにもう一つ。この義足の男は意外にも身なりに気を使う人物の様ですよ。」
「なぜ、そんなことまでわかる。」
「靴、ですよ。」
ささっと靴と杖をしまい、次は電子端末を胸ポケットから取りだす。
その電子端末は、シエルとセバスチャンが、この家に居候する、と決まった時に購入させたものだ。
セバスチャンは、あまり好んで使う事は少なかったが、シエルは年頃の子どものように、立ちどころに使いこなして見せていた。
その画面に映し出されていたのは、犯人と思しき人物の足元の防犯カメラの画像。
「それがどうした。」
「わかった!綺麗だから?」
「えぇ、さすがはお嬢様。」
「ちっ。でも量産品だろう?買ったばかりかもしれない。」
あからさまに拗ねるシエル。正解したことにはしゃぐウリエ。
「えぇ、ですが。量産品とはいえこのタイプの物は一般的には高価です。防犯カメラと言う物に映っていた映像を、見させていただきました。服装もありきたりでしたが、どれも新品同様でした。」
いったいこの男は、何の権限を持って防犯カメラまで覗いてきたのだろうか。
だが、ウリエもシエルも当然の仕事だと言わんばかりに頷くだけ。
「そんなにクスリの匂いをさせていて、義足で、真新しそうな服装なら。少し街を歩けば見つかりそうね。」
「えぇ。今日のご予定は」
「街に行く。」
シエルが、セバスチャンのセリフを奪う様に、言葉をかぶせる。
先ほど、小馬鹿にされたのが癇に障ったようだ。
「かりこまりました。」