As well be hanged for .....
第5章 砂糖は多めに 塩は少なめに 後篇
暗い部屋の中なのに、わずかな月の光を反射して、ウリエのエメラルド色の瞳が浮かび上がる。
「お前の眼は不思議だな。光っているようだ。」
「不思議でしょう?気に入ってるの。シエルの目も綺麗な赤ね。」
「僕は、元は青い瞳だ。」
「姉さまと一緒ね。」
ウリエはベッドから手を伸ばし、シエルの少し冷たい頬に触れる。
「そっちの目は何色?隠している方。」
どんな時でも眼帯を外さないシエル。
この目に、セバスチャンとの契約の証がある事は、ウリエにも教えてある。
ただ、実際に見せた事は無かった。
ウリエの手が触れている右頬、スルスルとシエルの眼帯へ指をかける。
シエルが止めない事をいい事に、ウリエはシエルの眼帯を外す。
ぱさりと外れた眼帯。
「紫色?」
「あぁ。」
「随分目立つ色。」
シエルの目じりを撫でるウリエ。
いつまでもやめないその手を、シエルは優しく包み、繋いだままベッドへ降ろす。
「お前の姉は…」
「姉さまは、女王に腕を買われて王宮に召し抱えられたの。でも、それっきり。」
自分から逸らされた緑の瞳。
シエルは、少しだけ置いて行かれた気持ちになった。
星の天蓋を見つめるウリエは、姉との楽しい思い出を見つめている。
「姉さまにメールを送っても返事は来ない。女王に手紙を送っても姉の話は一切無し、仕事の事ばかり。音信不通。」
ぎゅう。と握られた繋いだ手。
伝わってくるのは揺らぐウリエの心。
「いつか会いに行けばいい。女王へ謁見か何かで用事を付けて。」
「うん。」
「もう寝ろ。寝るまでこうしているから。」
目を閉じて穏やかに眠りに付くウリエ。
揺らいでもなお甘い匂いを漂わせる魂に、シエルは思わずゴクリと唾を飲む。
赤く色付く甘い実に手を出すにはまだ早期である。と自分に言い聞かせ、いつの間にか離していたウリエの手をもう一度優しく握る。
「まだ先だ。もう少し、先。」