As well be hanged for .....
第5章 砂糖は多めに 塩は少なめに 後篇
「あーぁ。結局なんにも解らなかったわ。」
疲れただけ!と帰りの車の中で伸びをするウリエ。
シエルも疲れているようで、特に口を開く事もせず窓の外に視線を向けたままだ。
「これでは、示しが付きませんね。」
「えぇ。なんとかして尻尾を掴まないと。」
タウンハウスに戻り夕食を取るが、疲れきっているウリエとシエルは、静かに食事を取る。
いつもこうであれば、余計な仕事が無くていいのだが、いつもの小競り合いの無い夕食は、セバスチャンにとっては少し物足りない気もした。
食後のティータイムもぼんやりと過ぎていく。
「ぼっちゃん。お嬢様。」
珍しく静かに、エドガーから送られてきた事件のメールを読んでいたウリエと、シエルが顔を上げる。
「少し、気になる事があるのです。」
「なんだ。」
「現場の匂いです。」
匂い?と思いもよらない事を口にしたセバスチャンを、二人は似たような光の瞳で見上げる。
セバスチャンは思わずにやりと笑ってしまったが、押さえて言葉を続けた。
「えぇ。他の二件は解りませんが、この間掃討したサロンに近い匂いがしました。」
「本当?」
「はい。あくまで私が嗅いだ匂いですが。」
そうセバスチャンは言いつつ、視線をシエルの方へ流す。
シエルはその視線を受けて、思い切りセバスチャンを睨みつけた。
「そんな匂いしなかったぞ。」
「ぼっちゃんには嗅ぎ分けるのは難しいでしょう。何せまだ、日が浅いですから。」
「…ちっ。」
悪魔としてまだまだ新米のシエルと、長年悪魔として生きてきているセバスチャンとでは、差が出るのは当然。
そんなやり取りを見て、ウリエがクスクスと笑う。
「ねぇ、セバス。匂いで犯人を追う事は出来ないかしら?」
「犬のようにな。」
「シエル。茶化さないで。」
「ふん。」
拗ねる主人と真面目な主人の契約者。
毎度面白い組み合わせだ、とセバスチャンはワクワクする。
「出来ます。ただ、色んな匂いが溢れる社会ですから、少々お時間をいただきたいのです。」
「わかったわ。」
「では。今から行って参りますが、お二人はくれぐれも喧嘩なさらないように。」