As well be hanged for .....
第22章 エピローグ
気持ちの良い朝日が窓から差し込む長い廊下は、古めかしく仰々しい装飾がほどこされている。
タイルに打ちつけられる靴の音は二人分。
それ以外は静かな廊下。
「約束の時間までは?」
「あと1時間でございますが、車移動に30分はかかりますのでお支度にかけられる時間は30分ですね。」
「車じゃなければどの位だ。」
「10分ほどでしょう。」
「それで行く。」
「承知いたしました。では、朝食のご用意を。」
「いらん。紅茶を。」
「はい。」
少々早足でどこか目的の場所へ歩いて行く寝巻の少年を、後ろを歩く執事は人間業とは思えないほど素晴らしい手際で、正装に仕立て上げる。
最後の寝癖を直しながら、目的の部屋の扉を、失礼ながら。と言いながら片手で押し開ける。
少年は特に礼を言うわけでも、注意するわけでもなく当たり前のように中に入り、つまらなさそうにテレビを見つめている背中に声をかける。
「おい。起こすなとはどういう事だ。」
「面白そうだなと思っただけよ?」
「いいか?時間に遅れたら恥をかくのは僕じゃなくお前なんだぞ。」
「違うわよ。恥をかくのは私たちじゃないわ。彼の方でしょう?」
「ふん。お前の遅刻癖が全国民に晒されるだけだ。ゴシップ紙に取り上げられるぞ。昨夜はお楽しみだったとな。」
「あら。お楽しむ相手は生涯に一人だけと決めているから、恥ずかしくもなんともないわ。」
「我慢の効かない緩い頭だと言っているようにしか、聞こえないがな。」